【受賞者コメント】 この度は大賞に選んでいただき、ありがとうございます。嬉しく驚くとともに身が引き締まる思いです。
お読みくださった読者の皆様、選考に携わってくださった編集部の方々に深く感謝し、いただいた賞に恥じないように今後も精進したいと思います。
本当にありがとうございました。
~戻ってこいと言われても絶対に嫌です。あれ、気づいたら実家が没落してた~
~最愛の人と辺境開拓スローライフ~
~いいね☆を集めてお手軽スキルゲット~
~ファイアーアロー?うるせえ、こっちはライフルだ!!~
~戻ってこいと言われても絶対に嫌です。あれ、気づいたら実家が没落してた~
~転生した最強の錬金術師は、劣等とされる錬金術で無双する~
~ギャルゲーの悪役に転生してしまったので、主人公とヒロインの邪魔にならないように生きていこうとしているだけなのに……頼むから構わないでくれ、俺はまだ死にたくないんだ~
皆様のおかげでアース・スターノベル大賞も無事に第3回を迎えることができました。前回に引き続き、たくさんのご応募誠にありがとうございます。
アース・スターノベルは昨年12月で7周年。この7年間で、ネット投稿小説の動向もずいぶんと変化がありました。異世界転生、チートと俺TUEEEの一強から、追放ざまぁ、おじさんもの、グルメ、お仕事・生産系、スローライフにもふもふや悪役令嬢、VRMMO、聖女……ざっとここ2年ほどで女性主人公、もしくは女性向け作品(異世界恋愛)がかなり増えた気がします。
第3回の応募作も例に漏れず女性主人公の作品が多く、今回は大賞受賞作も主人公はご令嬢でした。ネット小説の世界にもジェンダー平等の流れが来ているのだと実感します。
さて今回の応募作品を振り返りますと、作品全体のレベルが平均的に上がったせいかもしれませんが突き抜けて面白い作品が少なかったように思います。作品のレベルが上がれば読者の目も肥えます。既視感は安心感ともつながるのであってもよいのですが、そればかりだと最後まで読む気力が損なわれます。「先んずれば人を制す」の言葉通りネット小説界には先に書いたもん勝ちというような側面があるのは事実で、後に続くのはとても難しいです。
そんな中、やはり目を引くのはキャラクターに魅力のある作品でした。どこかで見たような場面から始まる冒頭や設定でも、キャラクターに魅力があれば気になって読み進めてしまうものです。設定の奇抜さや新しさも捨てがたいですし、描写の巧みさも同様ですが、それだけでは作品の骨格になり得ません。キャラクターの魅力がなければ空気人形のように小さな穴が原因で急にしぼんでしまうこともあるのではないでしょうか。
わかりやすさとテンポの良さ、ストーリーの流れなど必要不可欠な要素はほかにもありますが、今回は改めて基本となるキャラクターを考えさせられるような選考だったと思います。
この鬱積した世の中をどうにか切り抜けるべく、現実を忘れさせるような突き抜けた作品を今後もお待ちしております。
※コミカライズ入選につきましては、該当作品はございません。
『辺境の貧乏伯爵に嫁ぐことになったので領地改革に励みます』
著:花波薫歩
婚約破棄からの領地経営という手堅い設定を活かしつつ、ヒロインと新たな結婚相手との恋愛模様を時にコミカルに描写することで、男女問わず読みやすくなっている作品でした。
ヒロインがその手腕を発揮する領地改革と、彼女を陥れた悪役が凋落していく展開が、クライマックスに向けて1つの物語に収束しつつ盛り上がっていく構成は見事!
前向きで思慮深い令嬢かと思いきや、実はお菓子よりお肉派で、怒ると恐い主人公をはじめ、残念イケメンから一人前の領主に成長する結婚相手の貧乏伯爵、両家の家族やドラゴンなど、いずれもキャラクターたちがよく特徴づけられている点もポイントが高かったです。
悪役にもフォローが入るなど読後感も非常に良く、文句なしに大賞受賞となりました。 おめでとうございます!
お題:異世界で自由に暮らす。気ままなスローライフ
『没落令嬢の幸せ農場〜最愛の人と辺境開拓スローライフ〜』
著:殿水結子
戦火で焼け出された商家の令嬢が、ピンチを救ってくれた憧れの男性と結婚して、一緒に辺境でたくましく生きていくというドラマチックな作品でした。
主人公がただスローライフを送るだけではなく、スローライフ体験やそこで得られる成果物を通じて、人々の様々な問題を解決していく群像劇となっています。その点で、他のスローライフを題材とした作品と一線を画している印象でした。
都会と田舎、兄弟や姉妹、男と女、貴族と平民、老人と若者など、登場人物たちが色々な違いを乗り越えて交流を深めていくエピソードの数々にとても心温まります。そして一つ一つのエピソードが積み重なって、次第に物語が大きなスケールに発展していく展開も、読んでいて飽きさせないポイントでした。
お題:チート能力だけじゃない、機転を利かせて勝利をつかむ!
『異世界をフリマスキルで生き延びます。~いいね☆を集めてお手軽スキルゲット~』
著:深見おしお
チート力全開で転移した異世界でのさばる、というのは良くある話ですが、そのチート力をフリマでゲットするという設定にまず驚きました、というか笑えました。異世界の草やらキノコやら、一見どーでもよさそうなものを買い取ってもらって、衣食住の日常製品から各種スキルを手に入れる(買い入れる?)。こういうと、タイトルにもあるようにいかにもお手軽に異世界をわたって行けそうですが、この小説が面白いところはそう簡単に行かない山あり谷ありの展開です。さらにフリマサイトのモニターであるスキル「ツクモガミ」が、なぜだか分からないけど使っていくうちに変な意志らしいものを見せてくるところもいい。平凡なようで妙にキャラが立っている主人公や、一部文字化けする「ツクモガミ」のディスプレイ表示など、細かなところに面白さがちりばめられているのも、小説として良くできているなと感心しました。
『外れスキル「世界図書館」による異世界の知識と始める『産業革命』~ファイアーアロー?うるせえ、こっちはライフルだ!!~』
著:高野 ケイ
異世界に転生したキャラクターが現代知識で活躍したり、ゲームの知識で活躍する作品は多いですが、本作は少し捻って、異世界の人間がこちらの世界の現代知識にアクセスし、それを活用するという切り口になっています。『世界図書館』という能力のネーミングも良いですね。
また、能力に頼るだけでなく、交渉や駆け引きなど、主人公の頭脳だけで切り抜ける場面があるのも印象的。
キャラクター達もとても魅力的です。主人公とサブキャラクターの関係性を描くだけでなく、サブキャラクター同士の関係性もしっかりと描けています。
もちろん全体のプロットも秀逸で、どの部分も平均点の高い、完成度の高い作品でした。
お題:真夜中に読むのはやめろ!飯テロだ!
『エルフさんの魔法料理店』
著:夜塊織夢
前世で病弱だった少年がハイエルフ(4歳女児)に転生し、前世で満喫できなかった食道楽を満喫する、というストーリーです。エルフ幼女がろれつの回らない舌で「わらし、コックさん!」「ガンバゆー!」と言いながら魔法を駆使して料理する様がとても可愛らしく好感を得ました。登場人物に悪役がほとんどいないこともあり、愛嬌のあるキャラによるゆるっとした雰囲気に癒される作品です。よくある異世界でのステータス表示も、職業欄が「あにまるドクター」だったり、「花丸ポイント」なる謎の値があったり、節々に「可愛らしさ」と「ほのぼのさ」が溢れています。私もエルフ幼女の作る気まぐれ料理が食べたいです!
お題:女性異世界進出!
『灼熱の魔女はお熱いのがお好き?魔力ゼロの無能だと追放された公爵令嬢、災厄級の温めスキルで最強の温泉領地を経営する~戻ってこいと言われても絶対に嫌です。あれ、気づいたら実家が没落してた~』
著:海野アロイ
女性主人公作品ながら老若男女問わず楽しめるコメディ要素満載の作品。
ストーリーの本筋としては、追放された主人公が実は強力なスキルを持っていて成り上がるという、テンプレ通りの展開です。しかし、主人公のあまりにも強すぎるスキルと低すぎる自己評価、そして異世界と温泉といった色々なアンバランスが生み出すコメディ展開がとにかく面白く高評価を獲得しました。
登場人物がいずれも強烈なキャラクターの持ち主で、軽快でテンポの良いギャグとも相まって一気に読めてしまいます。また、主人公の獲得する能力がやたら物騒だったり、テーマの一つにもなっている温泉の効能がハチャメチャだったりと、とにかく読んでいてネタの隙が無く、どんどん「続きを読みたい!」と思わせてくれる作品でした。
『灼熱の魔女はお熱いのがお好き?魔力ゼロの無能だと追放された公爵令嬢、災厄級の温めスキルで最強の温泉領地を経営する~戻ってこいと言われても絶対に嫌です。あれ、気づいたら実家が没落してた~』
著:海野アロイ
辺境に追放された公爵令嬢・ユオが、領主になった貧しい村でとてつもない効能を持つ温泉を掘り当てたことをきっかけに村を発展させていくというストーリーを、テンポが良く明快な文章で描かれており、グイグイと読み進められました。
領地経営というゲーム要素もある内容で、温泉リゾートを作るための素材集めではバトルもあり、女性キャラが温泉に入ることでお色気シーンもあり、というカラフルな作品でした。
強い個性を持つキャラクターが次々と登場し、魅力的なセリフの掛け合いをしていくのも楽しく、飽きがこない作品です。また、メイド・猫耳などビジュアル性も兼ね備えているため、画も浮かびやすく、コミカライズに適した作品と感じました。