編集部 選評
宝石の記憶を見る事が出来るという特殊能力持ちの主人公が、貴族社会の宝石にまつわる事件を解決する物語──とすれば一見その能力ですべて解決していくのでは、という予想は見事に裏切られました。豊富な宝石知識、洞察力、度胸、商人としてのプライドや情熱も垣間見える、それらの特徴が総動員され、慣れない貴族社会を立ち回り、事件を解決していくのです。どこか淡々としているようで深みのある、主人公レルジェの魅力は大きなポイントでした。ガーゼルドとのコンビもハマっており、恋愛面で見せる普段とのギャップも際立っています。一つ一つのエピソードは、貴族社会という政治的な舞台ならではのドラマ性、エモさを帯びており、宝石のからませ方もバリエーションに富んでいます。長くはないながら、読み応えは抜群です。題材の活かし方、キャラクターがまさに宝石のように光る作品でした。