あなたの“好き”がココにある。アース・スターノベル創刊!

offitial twitter

フォローする




アース・スターノベル 毎月12日刊行!!

原作者 猫子先生からのコメント
どうも作者の猫子です!
この度、ドラたま書籍版七巻の発売と共に、ドラたまコミカライズ版(イバラのドラゴンロード)の第一巻が発売されることになりました!
ドラたまのWEB連載を開始した当初は、この作品がここまで大きくなることができるとは思いませんでした!
思えば連載開始ももう、三年前となるわけですね……振り返ってみれば、感慨深いものを感じます。
ここまで来られたのも、連載当初からドラたまを支えてくださった読者の皆様のお陰です!
本当にありがとうございます!そして今後はコミカライズドラたま、イバドラもよろしくお願い致します!
・・・・・・・・・・
キャラクター紹介
 目を開けて、辺りを見回す。どこまでも暗い空間が続く。視界の届く範囲には、何も見えない。
 ボクは宙に横になった姿勢のまま、脳内にいくつも視界を展開し、世界のありとあらゆる光景を観察していた。ボクのスキル、〖神の視界〗と〖多重並列思考〗の効果だ。
 出鱈目に切り替えていく視界の中で、やっぱり大した奴は見当たらない。どーでもいいことをしている奴らばっかりだ。いや、ながーく生きすぎたから、或いはボクに当事者意識が皆無だから、何やってるのを見てもつまらない、みたいな感想しか出ないのだろう。
「やっぱり、今、一番気になるのは、この子かな……」
 視界の中では、一体の子竜が、湖に座ってあれこれと思案している。今、〖ドラゴンエッグ〗から〖ベビードラゴン〗に進化したところだ。生を受けて間もないこともあって、混乱が大きいのだろう。
 どーにもこの子、せっかくボクが〖魔王〗に育てるためにあげたスキルを落っことした代わりに、輪廻に入る前の記憶が戻ったらしい。
 いや、こっちはせっかく五百年前に死ぬはずだった竜王を繋ぎ留め、〖竜王の息子〗という優秀な器を作ってそこに〖魔王〗の種を入れておいたのに、いつの間にやらぴょっこり種が抜けていたのは、正直意味がわからなかった。初めて気が付いたときは、本気で頭を抱えた。
 しかし、輪廻外の記憶を持っているその事実は、ボクにとっても興味深い。融通の利かないこの世界のシステム、ラプラスの馬鹿を出し抜くためにあれやこれやと画策していたので、その成果として、今まで蓄積してきたこの世界で処理しきれない粗、バグが、こういった形で表面化したのだろう。
 ただなまじ記憶があるせいか、ボクの言うことを明らかに疑って掛かっているようだ。無駄に動き回って余計なことをするかと思えば、妙に置きに行こうとしてそのままボクの思惑をぶち壊しにしちゃいそうになったりもする。
 いや、びっくりした。折を見て適当に誘導しようと考えていたら、ボクの意見をロクに求めることもなく〖リトルドラゴン〗なんて大外れを選びに行こうとするもんだから、ここ数百年で一番驚いた。いや、本当に。
 いつもはラプラスの使う〖神の声〗を乗っ取って、目を掛けている人間や魔物に対して、自我もはっきりしない間から刷り込みができるから、誘導も楽だったのだ。


しかしまさか、それが通用しない相手が出て来ようとは思わなかった。行動一つ一つに指示を出すのに、これほど苦心することになるとは。いっそのこと、新鮮な気分でさえある。
 いや、でも、本当に久々だ。今は少しだけ楽しい。ボクは、この世界の支配者となった最初の千年をずっと、いい神様として過ごした。でも、それには飽いてしまった。次の二千年は悪い神様として君臨して、その次の三千年は干渉を控える様にしてみた。その次は、その次は……を繰り返し、どれもこれも、もう飽きてしまった。今ではもう、何をしようが、最初から最後まで規定路線のルートばかりだ。
 だけれども、あの竜は変革を齎してくれる、そんな気がする。らしくなく、ちょっとわくわくしているんだ。長らくずっとボクの計画も停滞していたし、そもそも不可能じゃないのかとまで考えていたけれど、彼は、ボクの悲願という駒を大きく進めてくれる、そういうきっかけになってくれるかもしれない。
「進化の分岐炉では、大外れを嬉々として選ぼうとするキミに、どうにか路線を変更させないとと思って、あれこれと言葉を並べ立てていたわけだけれど……ボクの言っていたことが、嘘と言うわけではないんだ。本当に、期待してるんだよ、ボクは。ふふっ、失望させないでくれよ。まだまだキミの戦いは、始まったばかりなんだから。ボクの、可愛い可愛い、卵ちゃん」
 そんなことを呟きながらも、ボクは期待のドラゴンに重点的に意識を向けつつ、世界中の監視を行っていた。

 ――このドラゴンが生まれ落ちてから、数日ほど経過した。
「なんだこいつ……」
 ボクは口に手を当てて押さえ、絶句していた。このドラゴン、少々、いや、かなり危なっかしかった。この数日で、危うく一介の魔物に喰い殺されそうになった場面も多い。
 そういった事故でその周が台無しになることは珍しくはない。いつもならば、あーその程度の奴か、今回は一枠なくなったな、くらいの気持ちで構えているのだが、このドラゴンは、これまでの数万年の時の中で一度として生まれなかった、輪廻外の記憶を持つ特殊固体だ。そんな特殊固体をうっかりで失いたくはない。
 見ていてかなり冷や冷やしたし、どうにか勝利したときはほっとした。いや、いつ振りだろうか、こんな気持ちで見守れるのは。
 しかし戦闘の事故死なら仕方ない。避けようのないことだ。死ぬ奴は死ぬし、生きる奴は生きる。天運とか、才覚とか、そういう話だ。
 ボクが口出ししてやれば死はいくらか先になるだろうが、そういう奴は遅かれ早かれどこかで死ぬ。自力で切り抜けられるものでなければ結局はその場しのぎであるし、何も持っていない固体の辿る道に、ボクも関心はない。だから、戦闘で死にかけるのは、全然想定の範囲内だった。
 だが、迂闊にも冒険者の集団の前に飛びだしたときは、やっぱりこいつは駄目なんじゃないかと本気で思ったものだ。
 挙句の果てには、自身も瀕死の重傷を負った中で、村娘を背負って村まで連れていったときは、一周回って感心したものだけれど。でも、なぜだろうか、不思議と見ていて悪い気はしなかったけれどね。
 他の場面でも、あまりに間抜けなことを考えているので、ボクの権限で貼れる適当な称号スキルを張り付けて罵倒してやったこともあったし、時にはからかい半分でノリノリで貼り付けてからかってやることもあった。
 これは後者の方が多かったかな? ボクらしくないけれども、いや、あのときは面白かった。
 はて、いち個体の同行一つ一つに関心を持ったのはいつ振りだろうか。代えが効かない個体なので、見ているのにもつい力が入る、ということもあるのだろうが、彼の突出した個性によるところも大きいのだろうか?
 間抜けなお人好しかと思いきや、頭が回る時には回るし、追い詰められたときには根性を見せることもある……とまでいうのは、贔屓が過ぎる見解なのだろうか。
 或いは、これは恋という奴なのかもしれない。彼の動向に気を付けていると、つい他の観測が疎かになることがある。ボクのスキルなら、その気になれば千人相手に並列して話を進めることだってできるくらいなのにね。
 ボクは脳内の画面を切り替えながら、はぁ、と溜息を吐き、ぐぐっと背伸びをする。首をだらんと後ろに垂らす。ふと自分が先程考えていたことを思い返すと、腹の底から笑いが込み上げてくる。

「ま……生き残ろうが、どう進化しようが、データさえ集まったら殺しちゃうんですけどね」

 今回だけで目的が果たせるとは思っていない。欲しいのは、ボクの駒達の辿る、経路のデータ。最後まで辿り着いて、可能性を失くしたままずるずると生きられたって困るっていう話だ。
 中途半端に手に入れた力でボクの世界に勝手なことをされるのはゴメンだし、中途半端に手に入れた権限でラプラスに余計な干渉をされるのはもっとゴメンだ。それに、次の人間と魔物の戦いが遅れれば、それだけボクの目的を果たすのも遅れる。
 この世界は玩具。海も陸も、国も建物も、人も魔物も、等しく全てがボクの玩具。散々遊んで楽しませてもらったら、ぶっ壊して崩して、また好きなように積み直すだけ。
 ドラゴンと、目が合った。偶然だろう、別に驚きもしない。ドラゴンがたまたま空を見上げたのだ。
『〖神の声〗、お前はいったい何者だ?』
 続いて、ボクへと思考で質問を投げかけて来る。別に驚きはしない。偶然目が合う、そういうときもある。神様は、高いところにいるって考えは、別に不自然じゃないだろう?
 こっちとしては何も言うことはない。ラプラスに任せて、お決まりの定型句を聞かせてあげればいい。
【〖神の声:Lv3〗では、その説明を行うことはできません。】


            
・・・・・・・・・・
原作ノベル・コミカライズ絶賛発売中!
コミカライズ版もコミック アース・スターで絶賛連載中!閲覧はコチラをクリック↓